ども。この週末はまだまだステイホームでしたので、しかもお家での仕事も落ち着きましたこともあり、日本文学に耽りました。
高瀬舟 森鴎外著
学生時代、現代文の授業で習った時に衝撃を受けた作品です。それ以降、日本文学で何が好きかと尋ねられたら、迷うことなく高瀬舟をあげます。余談ですが、もう一つあげるとしたら、梶井基次郎の檸檬です。
話は高瀬舟に戻りまして、はじめにネタバレするとこの高瀬舟のテーマは『安楽死・尊厳死』です。『生きる権利』があれば、自分が『死ぬ権利』があるのかどうか。難しそうなテーマですが、短編の中に見事に表現されていると思います。
ざっくりとした内容
江戸時代の京都。遠島を言い渡された罪人・喜助が高瀬川を高瀬舟に乗って移動していく最中、護送人と身の上話を始める。
喜助の罪は弟殺し。しかし、喜助の清々しいような表情を不思議に思った護送人は事の顛末を喜助に尋ねる。
喜助は貧しいながら弟と助け合い生活をしていたが、弟が病気になってしまう。弟は兄一人に苦労を任せてしまっていることを申し訳なく思い、剃刀で自分の喉を切って自殺を図るが失敗してしまう。
剃刀が刺さったままの状態の弟を喜助は発見し助けようとするが、弟は刺さったままの剃刀を抜いて自分を死なせてくれと懇願する。喜助は躊躇しながらも、弟の頼みを聞き入れ剃刀を抜いた。
消化しきれない気持ち
すぐそばに死が近づいている弟を痛みと苦痛から解放させる事を選んだ喜助。喜助は罪人となったが、最後まで弟思いの良い兄だったと言えるのではないか。
助かる余地がないと分かった弟が強く死を望む。喜助が剃刀を抜けば弟は苦しみから開放される。
どうでしょう。喜助の立場での判断は正しかったかもしれませんし、優しかったかもしれません。
最後に
学生時代にこの文学に出会ってからというもの、読んだ後に来る、消化しきれない気持ちがたまらなく好きで何度も高瀬舟を読んでしまう。悲劇に見えるけど喜助と弟はハッピーエンドだなとワタシは思っています。
何より、死ぬ権利について考えるきっかけになる1冊です。これからも度々読み返すと思います。